「康太へ
最初にごめんね、突然だけどこの手紙が最後でこれからはしばらく書けそうにないや。
理由は何となく気が付いていたと思うんだけど、例のお父さんの借金のカタがついたので。
前の手紙に書いたでしょ?海徳さんって云う女の人の書類にハンコを押しちゃった話。
昨日、海徳さんがウチに来て、「お金が払えないなら大津さんの所で3年間働けば」って云ってくれました。何でも家政婦みたいな仕事なんだって。3年間、我慢して働くだけでチャラになるんなら、どうせ学校も行けないし、自分の中でもすっきりしたいからやる事にしました。
今日、この手紙を書いて、それから荷造りして、それで明日大津さんのお屋敷に行きます。お屋敷で働きながら手紙を送ることは性格的にムリだと思うし。康太と手紙でお喋りしていると、ツラい現実から逃げ出しそうになっちゃいそうで。ね、だから手紙来なくても心配しないでいいんだよ。どうせ康太は「心配なんかしねーってよ」って云いそうだけどさ。
また連絡取れるようになったら連絡します。
んじゃ元気でね。おにいちゃん。
みやび」
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